ルアー作りで光造形の3Dプリンターってどうなの?

3Dプリンター
クランクのリップ

「ルアー作りで光造形の3Dプリンターってどうなの?」と聞かれる事がたまにあります。
SLA(光造形方式)のルアー作りでのメリット、デメリットをご紹介します。

「そんな細かい話はいいから、早く教えて!」って方向けに、最初に結論を置いておきます。
最初の1台はFDM(熱溶解積層方式にしておくべき。
  ※透明な部品を作る為の2台目ならありです。

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SLA(光造形方式)のプリンターのメリット、デメリット。

SLA(光造形方式)がどういったプリンターなのか、ざっくり説明すると「液晶ディスプレイを透過したUV(紫外線)の光でUV硬化レジンを硬化させて積層して造形する」プリンターです。
FDM(熱溶解積層方式)とは造形形式の違いから、ルアー作りにおいても様々な違いがあります。

メリット


安価でも造形の分解能・精度が高い。

SLA(光造形方式)のプリンターは液晶ディスプレイの品質が造形物のクオリティーに直結します。スマートフォン等の普及に伴い高性能な液晶ディスプレイが安価に手に入るようになり、安価なプリンターでもハイクオリティーな造形が出来ます。
2020年12月現在、6インチ4K解像度のディスプレイを搭載したプリンターでも6万円前後で入手出来ます。6インチ4Kの場合、XY方向の解像度は35μmです。(Phrozen Sonic Mini 4K)
最も安価なものであれば1万4千円程度。2.8インチ480Pとワークサイズが小さくXY方向の解像度は116μm。(Anycubic Photon Zero)

透明の造形が出来る。

SLA(光造形方式)のプリンターはUV硬化レジンを使うため、透明な素材を使ってプリントする事が出来ます。ルアー作りでは結構重要。

FDMと比較して、一度に沢山の造形が出来る。

SLA(光造形方式)のプリンターでは造形時間は積層数にのみ依存します。つまり、同一の積層数であれば層での造形面積が多くても少なくても造形時間は同じになります。つまり、FDMよりも量産が楽。

レジンはPLAやABSよりも加工性が良い。

FDM(熱溶解積層方式)のプリンターで用いるPLAやABSといった素材と比べて、SLA(光造形方式)のプリンターで用いるレジンは、紙やすりで削ったり、カッターやデザインナイフで彫刻したりがとても楽です。

デメリット

レジンの毒性が強いので生活環境との隔離が必須。

これは特に注意して下さい。
わりと強めのアレルギーを引き起こす可能性がある為、使用する際にはゴム手袋、防毒マスク、保護メガネの装着が必要です。また、硬化中にも有毒ガスが発生する為、換気の出来る環境が必要です。

IPA(イソプロピルアルコール)等の消耗品が高価且つ入手性が良くない。

造形後の造形物は未硬化のレジンに濡れている為、IPAでの洗浄が必要です。もちろん、このIPAも取り扱いには注意が必要。と、取り扱いに面倒が多々あります。
水洗いレジンもありますが、IPAを使う必要がないだけでレジン自体の毒性は変わらない為、取り扱いに注意が必要な事には変わりありません。

中空構造が作れない。

液体のUVレジンにUVを照射して硬化する為、完全な中空構造が作れません。
中空構造を作る際には、液抜き穴と吸気穴を作り未硬化のレジンを抜く必要がありますが、完全に抜く事は困難です。

レジンが高価。

FDM(熱溶解積層方式)のプリンターで用いるフィラメントは一般的なPLAやABSでは1kg2500〜4000円程度。
SLA(光造形方式)のプリンターで用いるUVレジンは一般的なもので1000ml4000〜7000円程度。
と、概ね倍近くかかります。
また、UVレジンは液体の為、歩留まりが悪くキッカリ使い切る事は困難です。

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ルアー作りでのSLA(光造形方式)のプリンターの活用。

画像は私がSLAプリンターを使って作ったルアーです。

スプーンは1.2mm厚でプリントし、エイト環の接着をした後にUVレジンに一度潜らせてUVライトで硬化し、表面をヤスリで整えて塗装という工程で作っています。強度はエリアトラウトでの使用なら充分。

クランクはリップをSLAで、ボディをFDMでそれぞれプリントした後に接着して作っています。
これなら透明のリップに、強度を確保しつつ浮力が高くキレのあるアクションをするボディと「美味しいとこ取り」が可能です。

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取り扱いの面倒さのハードルはあるが、ルアー作りに使い道はある。

このように、取り扱いに注意が必要で、誰でも簡単に使えるというわけではないが、安価で高解像度の造形が可能な為、ルアー作りでも使い道は多々あります。

また、UV硬化性の耐熱レジンもあり、これで型をプリントする事で低融点金属での鋳造や、射出成形機を使ったインジェクションプリントでルアーを作る事が出来る可能性があります。※未検証。

といった具合に、既にFDMのプリンターでルアーを作っている方で、検討している方にはオススメは出来るぐらいのオススメ度合いです。これからルアー作りをする為にプリンターを選ぶ方はFDMのプリンターでルアー作家のユーザーも多いFlashForgeのFinderやAdventurer3Lite、AnycubicのMEGA Sあたりがオススメです。
既にFDMのプリンターでルアー作りをしていて、追加でSLAのプリンターを導入したいって方には、AnycubicのPhoton zero(激安)や、Phrozen Sonic Mini 4Kあたりがオススメです。

この記事を書いた人

神奈川県西湘地区~伊豆半島で釣りしてます。エギングとエリアトラウトをする事が多い。釣果は食べる派。猫がいると釣りを中断します。
フィラメントはPLA派です。

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