市販されているルアーの多くは左右に分割されたパーツを貼り合わせる、所謂”最中式”で作られています。これは金型に溶かした樹脂を圧入する射出成型で作られている事に由来します。
3Dプリンターでも同様の作り方をする事はもちろん出来ますが、3Dプリンターでルアーを作る際には金型を用いた射出成型の手法を必ずしも踏襲する必要はありません。
より自由な作り方を実現するのが、3Dプリンターでのルアー作りです。
分割する意味
そもそも、3Dプリンターでルアーを作る際に分割してプリントする意味とはなんでしょうか?
固定重心のルアーでは分割する必要がない場合が多いでしょう。
予め、ウェイトの金属を埋め込む為の溝を作っておけば、プリント後のボディにウェイトの金属を射し込んで接着剤やレジンを充填すれば済んでしまいます。
分割してプリントし、プリント後に貼り合わせる作り方は、移動重心や貫通ワイヤー等の内部構造が必要なルアーを作る場合が殆どです。
で、あれば、縦に分割する作り方が適している場合も少なくないはずです。
データを作る
私が大きいルアーを作る際に用いる縦分割の作り方をご紹介します。
作例は180mmのシャローレンジでウォブンロールするフローティングミノーです。
東京湾シーバスランカー便に乗船する際に、トップウォーターで出ない時に備えて作りました。
ルアーの外形を作る
先ずルアーの形状を作ります。
ここまでは、通常のルアーの作り方と同じです。
内部構造を作る
次に、内部構造を作ります。
このルアーでは、ラインアイにはエイト環、フックハンガーにはスイベルを使います。
ウェイトは全て球体を使い、ボディ中央部にはマグネット式の移動重心を搭載します。
ボディ先端側に並ぶ4つの溝は後からウェイトバランスのバリエーションを試す為に多めに作っておき、必要な箇所にのみウェイト球を入れます。
内部構造に沿った分割ラインを引く
次に、分割するラインのスケッチを描きます。
移動重心の溝に沿った線を採用しています。
分割する
先ほどのスケッチでボディを分割し、上半分を非表示にしました。
複雑な分割ラインの場合、一度ではうまく分割できない事がありますが、その際には細かく分割して後からボディを結合します。
嵌め合いを作る
プリント後の嵌め合いを考慮して、さらに分割と結合を繰り返します。
画像の赤枠、ここはフックハンガーのスイベルの位置に合わせてあり、ボディ上/ボディ下/スイベルの3つの部品を貫通するようにフィラメントを通す為の部位になります。
画像の青枠、ここは上下のボディを貼り合わせる際にズレてしまわないよう、フィラメントを埋め込む為の穴です。
プリントで太る事を考慮して隙間を作る
3Dプリンターでプリントすると、設計値よりも少し太る傾向にあります。
概ね、「ノズル径の半分」太るので、嵌め合いの箇所はそれぞれのボディを「ノズル径の半分づつ」削って隙間を作っておくとスッキリと嵌ります。
※使用するプリンターで太る量は変わるので、適当な立方体をプリントして実測し、どの程度太るかを把握しておきましょう。
プリント
こちらがプリントしたルアーブランクです。
縦分割にする事で、このように上下ボディの素材色を変える事で素材色を活かした見た目のデザインも可能です。
組み立て
組み立てるとこのようになります。
画像の赤ポチは上ボディ、下ボディ、スイベルを貫通するように射し込んだフィラメント。
このようにフィラメントを組み立てに使う事でズレを防ぎつつ、スイベルやエイト環を強固に固定する事が出来ます。※ルアーウェイト40g以上の場合、エイト環が開いてしまい抜ける事もあります。
トップコートをして完成
このルアーでは着色はせずトップコートをして完成にしました。
ルアーのスペックは
- ボディ全長180mm
- フック込み重量40~46g
- ロール強めのウォブンロールアクション
- フローティング
といった具合。
使用したプリンターとフィラメントは
- プリンター FlashForge Adventurer3(0.3mmノズル)
- フィラメント 黒 ユニチカ テラマックPLA
- フィラメント 黄 RepRapper PLA
- フィラメント 紫 SainSmart PLA
ユニチカのテラマックPLAはPLAにしては粘りが強く硬い為、大きめのルアーではよく使います。
RepRapperやSainSmartの物は色で選びました。
このように、浮力に神経質にならなくても良い大きいルアーでは縦分割にする事の利点が多く、内部構造をより自由に作り込む事を可能にします。
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